第31回
野球狂がいない!

 秋もめっきり深まる11月。静岡は草薙球場で、毎年恒例の「パリーグ東西対抗戦」が行われる。今年から本腰入れてロッテの応援をしており、自他共に認めるパリーグ派の私にとって、このイベントは1年の集大成である。毎年この対抗戦は草薙でやっているのだが、私が生で見るのは、高校1年生の時以来、実に9年ぶりのことである。あの時は、清原(当時西武)見たさにこづかいをはたいて内野指定をゲットしたと言うのに、いざ近くになると「ここが痛い、あそこが痛い」とまるで往年の中尾のように騒ぎ出し、結局来ずじまいで寂しい思いをしたのを覚えている。が、あの時に比べて、金銭的にも知識的にも裕福になった今の私には、多分誰が来ても素直に喜べることだろう。

 2週間ぐらい前に実家に連絡。寝床の手配(ちなみに、実家には私の荷物は一切ないので、何も言わずに帰ると痛いメにあう)は完了。が、しばらくして姉から、会社でチケット入手できたとの連絡を受ける。バックネット裏のSS席だそうだ。そんなところがアッサリ入手できてしまうとは…「地域密着型」という言葉のありがた味を知る。本来なら外野でワイワイとロッテの応援をしようと思ったが、貰えるものは貰っておくことにしよう。タダやねんから。

 当日は快晴。防寒グッズ準備万端の私はちょっと面食らう。暖かいと言うより、むしろ暑い。静岡ってすごいとこやねんなぁ。11月やで。実家からバスで新静岡(バスターミナル)へ、そこから静鉄で草薙総合運動場まで。バス180円と電車150円。330円で野球が観に行けるとは素敵である。新静岡では昼飯を購入。ちなみに、この日の朝飯は私が前日に食べたいとダダをこねたにもかかわらず、早めの就寝のため全く食べることのできなかった桜エビの天ぷらであった。朝から天ぷらって…とお思いの方もおられるかも知れないが、おっしゃる通りである。だって食べたかってんもん、桜エビ。昼はおにぎりとおでんを少々。静岡のおでんは、関東風だが、しょうゆが濃く、さらに食べる時にかつおと青海苔を振るのが大きな特徴である。また、近所の駄菓子屋でおでんを売っているのも特徴であろう。駄菓子屋でおでんを見るのは、おそらく静岡以外ないと思われる。具はそんなに変わったものは無いが、静岡の黒はんぺんは譲れない。実家でおでんを作ると、よく母はなるとを入れていたが、これは実家以外で見たことがない。練りモノってことでさつま揚げか何かの代用品なのであろうか。未だに謎である。おにぎりは、静岡の仕出し弁当屋の大手、テンジンヤのシラスむすび。これがうまいんだ。ジャコのおにぎりってあまりコンビニでも見ないのだが、ここのシラスむすびは本当にうまい。静岡でしか味わえないのが残念である。他に「たぬきむすび」という、揚げ玉を混ぜご飯のように炊いて握ったおにぎりがあったが、これは…うーん、どやろ。腹へっていたらうまいのだろう。購入。そういえば、新静岡駅には崎陽軒もあった。今度からお土産にしゅうまい、という手は使えない。

 おにぎりを持参して(おでんは途中でたいらげた)、球場入り。11時ぐらい。球場では、少年野球教室を開催中で、客としては見所がなかったが、バックネットでトスバッティングのトスをやっていた和田(西)の頭の具合が近くで見え、心配になってしまう。まだ30歳。あきらめずに倉持2世か何かになってくれ。そういえば久信はとうとうカツラのCMには出なかったねぇ。いや、全然関係無い話。11時半ぐらいにホームラン競争が始まる。松井稼(西)、中村(近)、ローズ(近)、カブレラ(西)と今年の4傑が下から順番に登場。結果は6本打ったカブレラが勝利。場外連発。やはりこの男、パワーは図り知れない。

 ホームラン競争が終わると、各チームの応援団が応援合戦を始める。その間、場内は開会式の準備をしているのだが、おかまいなし。開会宣言も、静岡市長挨拶も全く無視。始めたのがダイエーだったが、式に差し掛かる頃には6球団目の西武であった、役員はみんなライト(東軍側)を凝視しているように見えたのには笑えた。まあロッテも、いもしないメイや立川の応援をやることには問題があるであろう。

 試合開始。東軍は松坂が先発予定も、直前にかかと痛のため登板回避。三井(西)だった。ロッテは6番(ニ)堀、7番(中)サブロー、8番(捕)清水将の3人。日は小笠原1人で、あとは西武だった。西は、先発が寺原。3チーム均等にスタメンって感じがして大変よろしい。大島(日)が退団後だったので、代わりが田村藤夫だったのには笑ったが。1回は両チームヒットすらなし。2回表に5番小久保がライトに先制HR。風がレフトからライト方向で、打球がよく伸びていた。打った瞬間は入るとは思わなかった当たりである。が、その裏、東の4番カブレラがお返しのバックスクリーン弾。アッサリ同点。本塁打以外に点が入らない展開かと思ったが、続く5番和田がライト前、6番堀もライト前。チャンスが続く。が、サブロー三振で清水将が最悪のニゴ併。1点止まり。ここまで展開がかなり早い。シーズン中と違い、ムダな駆け引きが無いのが要因であろう。細かい野球をやっていないのもパリーグらしい。無死一二塁でサブローなんて、山本功でも送りバントの局面である。増してや東軍は伊原である。まあ送りバントしたら多分ブーイングなんだろうけど。サブローは一度、ライトにすごーく惜しい当たりをかましたが、惜しくもファウルであった。残念。

 東は3回に小林雅が登板。コバマサを3回に見られるとは感動である。1イニング限定だったが。3人でピシャリ。安定感はパNo.1である。バッテリー賞は豊田にもっていかれたが、これはキャッチャーの差だろう。伊東と清水将(里崎、橋本、椎木、辻)では明らかに清水将が役不足。そういえばロッテはなんで福沢をクビにしないのだろうか。吉鶴なんか、外野手転向した年にクビになって来年から二軍のバッテリーコーチだと言うのに(これもかなりおかしいと思うが)。

 4回からは正田(日)がマウンド。ところが、拍手も何も沸き起こらない。盛り上がっているのは、ライトの日ハムファンだけである。もちろん、この背景には、98年の甲子園での桐生第一vs静岡の一戦があることは想像に難くない。まわりの人も、「この正田ってのは高木(現近鉄)相手に勝った奴だら?」と静岡弁丸出しで話している。さらに、バックスクリーンの電光掲示板には、「静岡競輪、3連単11月30日から!」の文字が躍る。ここまで県を挙げて正田を無視するとは。静岡県人は、正田には敵対意識を持っているのだろう。それが手にとるようにわかって楽しかった。正田もさぞ投げづらかっただろう。小久保に今日2本目のヒット(タイムリー)を許してしまう。さすがは元脱税王。西は3〜6回まで小関のヒット1本だけ。ちなみに、そのヒットは、ニ遊間を抜けようかという打球を、セカンド進藤とショート塩崎が交錯するという、非常に珍しいプレーだった。こんなお粗末なプレーをやるようでは、最下位も当然である。が、この交錯の際に2人とも倒れたのだが、トレーナーが行くより早く石毛が走っていったのには笑えた。そら、オリにしたら貴重な戦力やからね。東は3番の小笠原がノーヒットのため、打線がカブレラの前で途切れてしまう。西武ではないが、3番の役割が大事なのがよくわかる。ロッテはそんな3番に我らが福浦がいるのもよくわかる。今年は4番が打たなかったのがいけないのだが。ボーリックとは2割ちょっとだったし、一時は立川が4番打っていたり、両外人がダメな時は福浦が4番打ってたもんなー。初芝だとチャンスに弱いし。メイは来年どうなんやろ。新外国人に期待か?そろそろ今江と喜多を上位で使ってやってくれ、山本!あとはドラフトで西岡(大阪桐蔭)が育てばなー。

 7回表。西は1点を追加し3-1。その裏、梨田はマウンドに赤堀を送る。当然、場内からは割れんばかりの大歓声。今回の参加者の中で、唯一の静岡出身である。正田とは扱いの違いが顕著に出ている。が、この赤堀、カブレラに2本目を打たれ、さらに高木浩にもタイムリーを打たれてアッサリ同点に追いつかれる。これで3-3。盛り上がる球場。さすが赤堀、空気を読んでおります。7回を何とか投げきり、疲れ果ててマウンドを降りる赤堀。このピッチャーがチームの抑えだったことがあるのであるからびっくりする。

 これで次に勝利打点を挙げた奴がMVPやなー、と思うと、8回表、途中出場の塩谷がタイムリー(ピッチャーはこの回からロッテの清水直)あー、地味に決まってしまったなー、と思っていたのだが、小久保がまたホームラン。5-3。平穏に試合が終われば、もう小久保で決まりである。ロッテ陣は、ここまで活躍の場が無い。追い討ちをかけるように、9回続投の清水直が、日高にタイムリーを浴び、6-3。直は打者12人で被安打6、自責点3.試合ブチ壊し。このピッチャーがロッテではローテ2番手であるからなお恐い(開幕当初は中継ぎだったが、先発のコマ不足でローテ入りしたのだが)。

 9回裏。マウンドには萩原(オ)。今年、一時期抑えをやっていたピッチャーである。トップの和田を抑えたのだが、続く堀がライトフェンスにダイレクトの三塁打。狭い草薙で三塁打とは珍しい。ライトは柴原(ダ)であったが、ダイレクトで取れそうと思ったのか、ダイビングして届かず、ボールはライトを転々と…といった感じである。一死三塁からサブローがセンター前にタイムリー。野口も続いて6-5。途中出場の田中幸雄がレフト前で同点。ライトはロッテファンも西武ファンも幸雄ジャンプやってます。続く中村(日→阪神トレード)が倒れ、規定により6-6で引き分け。

 表彰式に移ろうとしているのだが、引き分けだし、盛り上がりに欠けたものだった。MVPは予想通り小久保であったが、試合を盛り上げた立役者は、清水直と萩原であることは間違いない。優秀選手には、田中幸雄も選ばれていた。守備要員で9回の守備に付くだけだったのに、裏に反撃してしまったから打順が回ってきてたまたま打って30万円である。羨ましい。

 表彰式中だが、おもしろくなさそうだし、帰り混むと思ったので、早めに球場を出る。松坂は登板せえへんわ(ずっと一塁コーチはやっていた)、ロッテの選手は活躍せえへんわで、見所と言われると厳しいものであったが、野球の知識が豊富となった今は充分に楽しめた。一部の選手はこれから日米野球に行くようであるが、2年に1度、絶対にパリーグ東西対抗とかぶる。これだけぞんざいに扱われ、選手もセに抜けていき、盛り上がりに欠けるパリーグだが、手立てを講じるつもりは無いようである。なんとか、人気回復のため、露出を増やして欲しいものだ。今回は私のネタを披露する場所が全くなかったので、来年こそは、誰か野球の(歪んだ)ネタを多数お持ちの方々のご来場を心より期待する次第である。


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