第76回
西国三十三箇所巡礼の旅 vol.1
〜2006 夏休み特別企画〜

 サラリーマンにだって夏休みはある。毎年お盆に取れればいいのだが、私の会社は都合上お盆に取れるとは限らない。今年もお盆に取れない(取らない)私の夏休みは、去年同様8月末から9月末となった。

 2004年、2005年と2年連続で北海道に行ったのだが、さすがにもう北の大地ではやることがなくなってしまった。去年、あれだけ回れば殆んどやり尽くした感があるのは当然である。沖縄はもう本島を全て回ったし離島には今のところあまり興味が無い。そうなると、残るは本州以外では四国、ということになるのだが、1週間四国にいてやることは?との自らの問いに、結局解が見つからなかった。ただ、強いて言えば、という前提で「四国八十八箇所巡礼」が浮かんだが、果たして1週間で完全巡拝ができるのか?という疑問から却下。1人というのはフットワークの軽さと車での行動の制限(眠くなったり疲れたりしても代わりがいない)とが同居する諸刃の剣なのである。

 さて、四国八十八箇所巡礼がなくなり、四国に寄る理由も無くなったので、次にまたネタを探さねばならない。7日間、家でゴロゴロするというのも手段の1つといえば1つなのだろうが、流石にそれは逆にしんどい。大体、夏休みをそんな風に利用している人が日本全国どのくらいいてるのだろうか(ニート、引きこもりを除く)。ちなみにうちの父は1週間休みをもらって、昼間ずっと家で高校野球を見ていたらしいが。親子揃って考えることに変わりが無いというのは、やっぱり親子なのだ。家でゴロゴロする、という選択肢を省き、じゃあ近場にしようか、と思った際に浮かんだ1つの案。これが2006年の夏休みを決定づけた。

 タイトルにもあるので完全にネタバレだが、それは西国三十三箇所巡礼の旅である。動機から考えると、完全に四国八十八箇所巡礼の妥協案であることは言うまでもない。西国三十三箇所の方は、33箇所全てが関西であることから巡礼中に毎日家に戻ることが可能である。従って、四国で寝泊りするより金がかからない、というところも魅力だ。妥協案、万歳。

 三十三箇所を7日間で、ということで平均して1日あたり5つか6つを回らなければいけない、という制約がつく。途中で中途半端に終わっても、土日のみを使って余った(回っていない)箇所を埋める、という形は私の性格上やらないと思われるので、なんとしてもこの7日間で完遂しないといけない。しかも、ただ名所を回るだけではないのがこの旅の大きな特徴だ。目的はあくまで巡礼である。そのため、上記の1日あたりの回るお寺の数、以外にもいろいろな制約がつくのである。参拝には作法があり、通常は下記のことを行う必要がある。

  1. 山門で一礼
  2. 手水屋で心身を清める
  3. 鐘楼で打鐘
  4. 本堂で読経を含め勤行
  5. ほかの堂塔で同様に読経
  6. 納経
 ただ、1つ1つ全てをやるには時間が無いし、本堂以外の堂塔で勤行を行うとなるとさらに時間がかかる。般若心経も観音経もロクに読めない私なので、勤行を含め一礼の参拝には無作法にならない程度に、

  1. 山門で一礼
  2. 手水屋で心身を清める
  3. 鐘楼で打鐘
  4. 本堂で御詠歌を三唱
  5. 納経
 の5つとした。御詠歌とは各寺院に1つずつある、勤行の最後に詠う五七五七七の巡礼歌である。これはガイドブックにも記載されているし、何より和歌のスタイルなので三唱しても時間がかからない。書いてあるものを読むので覚える必要もないし、般若心経と違って長くないし難しい読みも無い。本当に最低限ではあるが、こういうものは義務としてやらされるよりも気持ちが大事である(と勝手に解釈)。本堂では拝礼と御詠歌、そして賽銭の3つだけを行うことに(勝手に)決めた。これなら1つのお寺で約10〜15分で済む。移動がシビアな今回の旅の足枷はなるべく予め除去しておくべきなのである。

 これでスタイルは確立したので、後は巡礼方法である。33箇所、関西の2府4県(和歌山、大阪、奈良、京都、兵庫、滋賀)に跨るそれなりの大きな道程となるゆえ、移動の足は電車か車になる。が、電車は駅と寺院との移動時間、それに電車を待つ時間が予定を狂わせる可能性があるので、ここは金をかけてでもレンタカーを手配することに。北海道旅行で5日間で2,500km走った私である。関西圏の車移動であればそう負担にはなるまい、との判断が働くのは当然なのだが、後にこれは勘違いで当然のように苦行となるのである。

 また、納経の時間は各寺院ごとに限られていて、基本的には8:00〜17:00である。つまり、去年(2005)の時とは違い、自分のペースで回る、ということが不可能なのである。起床時間、寺院までの移動所要時間も考慮に入れる必要が生じる。大きな足枷だが、逃れることが不可能なのでこればかりは従うしかない。実際に次の寺院まで車でも1時間以上かかるところもあり、17時までに入山できるか否かを判断し、寺院に向かうか家に帰るか(無駄足を踏まないか)の選択に迫られる場面もあった。まあこれに関しては後々わかることなのでここでは詳しく論じないことにする。

 移動手段も確定し、レンタカーも予約を入れる。日時は8/30(水)〜9/5(火)という土日を挟んではいるが中途半端な7日間に決定。これは8/28からの予定だったものが、訪問する客先とうちの会社の上司とのスケジューリングが合わず、8/28と29に仕事が入ってしまったため、後ろにずらした結果である。

 巡礼順は一応番号順とするルールを自ら課したが、時間の兼ね合いで多少前後するのもアリともした。順番を守っても効率が悪くなると未達成のまま終わってしまう可能性が考えられたためである。また、道中高速道路を含めた有料道路は時間短縮になれば有効活用することにし、逆に帰り道は晩にレンタカーを駐車場に停める時間を短縮するためにゆっくり帰ることを原則とした。金をかけるところとかけないところとをしっかりと分けることにより無駄な出費を抑えることにもつながる。これで計画はほぼ完璧。あとはもう回るだけである。

 そこで、33箇所ある寺院の場所をチェックする。すると、ボトルネックとなりうる箇所がいくつも存在することが発覚。具体的には、

  1. 第一番札所の青岸渡寺だけ那智勝浦とかなり離れた場所にある
  2. 第二十四番札所の中山寺からは1つ1つの寺院がやたら離れている
  3. 第三十三番札所の華厳寺も岐阜の揖斐とかなり離れた場所にある
  4. 三十三箇所以外にも番外が3箇所存在する
  5. 寺院によっては、車で入れないような山中にある所もある
  6. 寺院によっては、拝観時間が16時まで(もしくは16時半まで)のところがある
 の6つ。まず一番厄介なのは 6 だが、これは私自身でどうしようもないので、16時過ぎに訪れようとしている寺院の拝観時間が16時までの場合は予定を変更し、間に合いそうな寺院に先に行くことにする。 5 も同じく厄介ではあるが仕方が無いので最寄の駐車場か何かに車を停め、歩いて参拝するしかない。 4 は時間の関係で今回は割愛し、純粋に33箇所の参拝とすることにする。 2 は物理的な距離間の問題となるが、移動に時間を取られるのは不可避なので、なるべく前日に二十三番札所で終わり、朝イチに二十四番から回っていく方法を採ることにする。 3 は三十二番札所を参拝し終わった時間により、家に一旦戻って出直すか、強行するかを判断。強行した場合は間に合わなかった時のことを考え近くに宿をとることも視野に。また家に戻った場合は残り1箇所となっている状態なので、駐車場代、ガソリン代等も考えるとレンタカー返却も視野に。いずれにしてもその場での判断をすることに。

 さて、残るは 1 である。私が住んでいるのは大阪市内、訪れる場所は那智勝浦である。車で片道4時間はゆうにかかる場所である。となると往復8時間。仮に納経所が開く8時に納経を済ますとしても、家を4時前には出なければいけない。レンタカー屋はこんな時間に開いてないので、前日に借りておかなければならない計算となる。しかも、納経後がまた厄介。第二番札所の金剛宝寺は和歌山市内にあるので、そこに行くのにもまた数時間を要するし、4時前に出ることを考えると起床時間が早く、17時まで目一杯回ったとしても家にたどり着いてさらに次の日の8時に間に合うような時間に起きなければいけない。体力とレンタカー代(+駐車場代)を考えると得策とは思えない策である。そもそも、この企画以前に私は車の運転があまり好きでないという、そこが一番のネックやん!!というツッコミが方々から聞こえてきそうなボトルネックが存在するのである。

 総合的に考え、結局私が下した判断は青岸渡寺のみ電車で行くというまともな決断であった。ただこれにも問題があり、ここに行くと金剛宝寺に車で行くには一度大阪に戻り、さらにレンタカー屋に行ってレンタカーを取ってきた後にまた車で和歌山まで行く、ということを強いられる。3時起床を決行して車で青岸渡寺に行くのは体力的な問題、青岸渡寺だけ電車で行くのは後の巡礼の時間的な問題が発生するという、なんとも悩ましい問題が発生したのである。が、私が採ったのは結局後者(青岸渡寺だけ電車で行く)である。1日潰れるのは覚悟していたのだが、ふと考えるとこれには回避策が1つある。それが、青岸渡寺のみ予め1日取っておいて電車で行くというウルトラCである。というかもうこれしかない。かくして、7日間の夏休みとは別に、1日前もって時間をとる日が必要となったのである。

 さ、ここからやっと旅の始まりですよ。プロローグだけ読んで疲れてちゃいけません。

 新大阪駅 8/26(土) 7:20 

 夏休みの少し前、8/26(土)。朝7時過ぎの新大阪駅。土曜日ということで多少のサラリーマンが見られるが、ファミリーも多い。世間の子供たちはまだギリギリ夏休みである。この日は7:35の新宮行き、スーパーくろしお1号に乗車予定である。これが当日に一番早く那智勝浦に行ける手段なのである。目指す駅は紀伊勝浦駅、スーパーくろしお1号に乗っても到着は11:36。特急でも所要時間が241分。末恐ろしい場所が第一番札所になっているのである。JR西日本管轄なので、みどりの窓口に行かずとも券売機で特急の指定席が購入できるので、券売機に。さすがに土曜日の朝イチの電車、空いてるだろう…と指定席の予約をしようとするが、なんと窓側は満席との情報。いきなりの見通しの甘さを痛感。まあこればかりは仕方ないし、あと15分で電車が来るので今から自由席のところに並んでもひょっとしたら座れないかも、という不安にかられ、通路側でもいいからと指定席を手配。すると、1両に1つだけ通路側のみの席があることを発見(券売機のGUIでそう表示されてた)。飛行機のように非常口が出っ張ってて座れなくなっているのだろうか。いや、これは特急だから車両の途中に非常口なんぞ必要ないはず。でも理由がはっきりしない。朝イチということで道中寝ていくことを決めた私なので、なるべく他人に干渉されない席がいい、ということでこの通路側しかない席を手配。いざホームに。

 自由席の乗り場にはすでに長蛇の列。新大阪が始発の電車であるが、途中、例えば天王寺から乗車する人はおそらく座れないと思われる。ご苦労様。さて、私の席は…と。キップに書かれた席まで行く。そこで、私は生まれて初めての光景を眼にするのである。

スーパーくろしお
異様な席の配置

 これが通路側しかない席の正体。理由は何やら柱が出っ張っている、ただそれだけである。壁によりかかることのできない、壁に沿って配置されていない席。なぜか車両の真ん中にある柱。まったく理解不能である。ものすごい居心地が悪い。例えて言うなら、3列シートの深夜バスの真ん中に座らされているような心地悪さである。ちなみに通路を挟んだ反対側にも同様に通路側にしかない席が配置されており、これまた同様に柱があるのである。なんでこんな奇怪な造りにしているのか。JR西日本、考え直してほしいわ。天王寺で後ろの座席に2人組のおっちゃんが座っていたが、窓側に座っていたおっちゃんが足を伸ばし放題伸ばしていたのが印象的だった。そらそういうこともできるわな。

 天王寺を過ぎると強烈な睡魔が私を襲う。朝6時起きが応えたか。逆らわずに寝ることにする。道中、同じ車両に乗っていたガキがけたたましい音を立てて騒いでいるものの、睡魔が勝る。いつもなら完全に文句言うてるところだが、色気より食い気より眠気である。

   ふと目が覚める。時間を確認すると10時すぎ。2時間ばかり寝ていたことになる。どうにも車内が騒がしく、それに体が反応した形だったが、アナウンスでもうすぐ白浜駅に着くとのこと。ここで半分ぐらいが下車。うるさいジャリも降りていき、車内は一気に静けさを取り戻した。で、また就寝。白浜到着は10:09だったので、まだ1時間半もある計算。もう一眠りは充分可能な時間なのである。

 紀伊勝浦駅 8/26(土) 11:36 

 4時間かけて、ようやく紀伊勝浦駅に到着。次に目指すはいよいよ青岸渡寺。ここからはバスで約30分かかる、と事前の調査でわかってはいたが、バスの乗り場と時間が不明だったのが不安。ほどなくしてバス停を発見。時間を見てみると、次のバスは11:50とのこと。さすがに電車に合わせてバスのダイヤを組んでいるらしく、乗り継ぎは比較的スムーズである。勝浦に来る人は港目当てか温泉目当てか那智山(青岸渡寺がある山)目当てかのほぼ3択なのであるが、港と温泉はほぼ同方向なので実質バスの路線は2つである。もちろん、電車に合わせて殆んど同じ時間に発車となるのであるが。で、私の目的地は那智山なので、バス停でチケットを購入。バス会社のおっちゃんに「往復チケットがお得です」と言われたので言われるがまま購入するが、なんとこれが1000円もするシロモノ。ちなみに那智山までは片道通常運賃が600円らしい。まあ田舎で30分も乗ってればそのぐらいの額か。いやいややっぱり高いって。昔の私の実家も駅からバスで30分以上かかったが、350円ぐらいだったから。

紀伊勝浦駅
バスの往復チケット

 終点のバス停名が「神社お寺前駐車場」ってどんな名前やねん。

 10分ほどしてバスが来る。先頭に並んでいたので労せず座れる。が、周りは年寄りが多い。もし満席になったら席を譲らないとアカンのか…との不安がよぎったが、杞憂に終わった。いや、気持ちよく譲りゃええやん、わし。

 途中、大門坂というバス停に到着。ここで7割ぐらいが下車。実はここから那智山まで熊野古道が延びているのである。というわけで、ここで下車して歩いて登っていく人が数多く見受けられるのである。ここには山登りの人のために大きな駐車場も完備されており、車で来ているにも関わらずここに車を停めて歩いて登る人すらいるらしい。立派。私はやりません。

 神社お寺前駐車場バス停 8/26(土) 12:18 

 しばらくしてバスは終点に。確かに所要時間は約30分。しかし、ここで大きな問題が発生。ものすごい豪雨である。「ものすごい」と「豪」が既にトートロジーだが気にしない。とにかくすごい雨なのである。不幸にも私は傘をもっていなかったのだが、他にこのバス停で降りた客は全て持参していた。天気予報は全然雨予報ではなかったが、勝浦といえば日本有数の降雨量を誇る地帯。当然の装備なのだろう。私は仕方なくタオルと帽子のみの装備で参拝することに。バス停からすぐのところに石段があり、ここから青岸渡寺に行けるとのことなので登っていく。途中、記念撮影をする場所があり、カメラマンがスタンバイしていたが、この雨なので誰も止まろうとしない。ああ、大変やなー、と思っていると、「兄ちゃん、何で傘持ってへんねん」と、勝浦では傘の装備がさも当然だよ、とあざ笑うかのようなカメラマンの声。逆にこっちが心配されてどうする。

 石段を登り始めて約10分、ようやく山門が見える。ここが第一番札所。ようやく1/33である。

西国第一番札所
那智山 青岸渡寺
山門
本堂

 山門と書いてあるが、実はこれは山門ではない。青岸渡寺は「那智大社」という神社とくっついているのだが、その神社の鳥居である。山門も別にあったが、「西国第一番札所」と書かれた石碑が見栄えがいいのでこの写真を採用。本堂は世界遺産らしい。うーん、熊野。

 手水屋で手と口をすすぐ。次に鐘楼を探したところ、近くにあったが一般参拝客の打鐘は禁止されているらしい。お寺によっては時報代わりにするらしいので、勝手にゴンゴン衝いてはいけないところが多いようだ。残念。本堂で御詠歌を三唱、最後に納経所へ。納経所では納経帳と呼ばれる帳面に御朱印を受ける。これが言わば「スタンプラリー」のように、行った証拠となるのである。御朱印を受けるには300円必要。納経帳は確か1500円。ここでは1800円の出費となる。

納経帳。青岸渡寺で購入
御朱印。左頁は全て手書き

 後は敷地内を散策。雨も小降りになってきたので遠くまで足を延ばす。ここには「那智の滝」という、落差が113mもある滝が有名。三重塔とあわせた写真をどうぞ。

那智の滝をバックに三重塔

 雨上がりということでいい感じに靄がかかり、なかなか幻想的な写真に仕上がる。我ながら見事。ちなみに三重塔の中に入るには200円必要だが、ケチって入らず。

 さて、これで用事が済んだので帰ることに。バス停に戻る。

 神社お寺前駐車場バス停 8/26(土) 12:55 

 バス停に到着。次のバスの時間を見る。すると、次は13:40。ちなみにこの時点で時刻は上記にある通り12:55。また雨が降り出した中で45分もただ待つことになる。さすがに退屈。暇つぶしも何一つ所持していない。土産物屋はみどころが無い。考えた末、どうせならということで熊野古道を歩くことに。前述通り、大門坂まで出ればバス停があるので、そこまで行くことにした。土産屋のおばちゃんに聞くと、30分もあれば降りられるとのこと。そうなるとバスの時間もなかなかいい具合になってる。熊野古道は林が続いてるので雨に濡れる心配も(少なくともお寺で待っているよりは)ない。

 いざ、出発。登りの苦しみが全くわからない、完全な一方通行である。で、歩き始めてすぐあることに気づく。ご丁寧に石段になっている上、所々苔が生えているのでかなり滑るのである。スニーカーではないが動きやすい靴を履いてきてよかったのだが、それでも滑る。踏ん張りが利かないし、万が一滑ったとしたら滑ったところは石なのでかなり危険だ。慎重にならざるをえない。幸い、周りは杉林なので雨露は凌いでいる状況。もし春先にここを歩いたらものの1分で花粉症になることは間違いないが。

雨と苔の熊野古道

 ひたすら歩く。途中、何人かにすれ違ったが、登山と参拝を主眼に置いた観光客と、「とりあえず熊野古道やし歩いてみようか」的なノリの観光客とハッキリ二分できた。前者と後者では装備が全く違うのである。特に、若い女性がヒールの高い靴で歩いているのを見かけたが、あれは準備不足も甚だしい。ただ世界遺産というだけでノリで歩いていたのは間違いない。滑りそうになっていたのを何度も堪えさせていた横の彼氏が健気だ。ていうか可愛そう。まあこんな靴で山道歩かそうとしている彼氏にも問題の一端(いや、半分ぐらいか)はあると思うが。

 大門坂バス停 8/26(土) 13:30 

 やがて、石段がなくなる。すると林もなくなり視界が開ける。道路が見え、着いたところは大門坂。所要時間、ホンマに約30分。さすが地元のおばちゃん、情報が確かだ。13:40発のバスは大門坂までは所要時間が5〜6分なので、ここで15分ほど待つことになるが、30分時間潰しもでき、熊野古道も散策できたので文句はあるまい。幸い、駐車場にはトイレと休憩所が併設されており、屋根があり雨はしのげる。

大門坂
休憩所。なかなか立派

 雨がやや大降りになりだす。バス停からやや離れた休憩所であるが、濡れるよりは遠くてもここで待つのが得策と判断。すると、ハイエースに乗った三世帯、7人ぐらいの大家族が先客としていた。どうやら車で行くか、熊野古道を歩くかを判断しかねている様子。子供の足では危険と感じた私は的確なアドバイス。せっかく車があるんやから車で行け、と。向こうもずぶ濡れ(半分以上は汗だったのだが)の私を見て説得力を覚えたか、アッサリ承諾。子供の足も危ないが、年寄りの足も危ない。装備もロクなものじゃなかったし。賢明だろう。

 バスは13:50頃にやってきた。乗車するが、なんと座席が埋まっている。仕方なく前の方に立つことにしようと半ば諦めていたところ、急に座席に座っていた2人組が「降ります!!」と宣言して下車。今まで那智山にいて、下りのバスに乗ってきたのにここで降りるとは。意味あるのだろうか?ともあれ、偶然にも席にありつけた私。座って紀伊勝浦駅まで行くことができた。ちなみに大門坂から紀伊勝浦駅まで、通常料金では410円。ということは、あの往復チケットでは10円しかもうかってないことに。はぁ、時間をかけて何てムダなことを。

 紀伊勝浦駅 8/26(土) 14:10 

 駅に到着。第二番札所は和歌山市内にあるのだが、電車によっては微妙な時間である。が、この日は草津で遊ぶ約束になっていたのでそのまま帰ることにした。が、行き先は草津である。ここは勝浦。ひょっとしたら、亀山→柘植経由で行った方が早いかもしれない。そこで駅員に聞く。いろいろ端末を駆使して確認してもらうことに。いろんな方法を試してもらっていたので私の後にはなかなか長蛇の列ができてしまっていた。みなさんごめんなさい。でも電車はなかなか来ませんからご安心を。で、出た結論は、やっぱり大阪ルートの方が早いということ。わずかの差だったが、疲れを考慮して大阪ルートで特急に乗ることを選択。ちなみに亀山ルートだと3回乗り換えがあったらしい。乗り継ぎは悪くなかったらしいが、さすがにしんどさが先に来た。で、次の特急が15:07。また50分ぐらい開いてしまった。

 ふと考えると昼飯を食べていない。ここは長めの時間もあることだし、遅い昼食にすることに。駅前に商店街があったが、土曜のせいかシャッター通りとなっていた。唯一開いているお店で海鮮丼が置いてあるようなのでここに行く。さすが勝浦。港が近いというのはいいことだ。早速メニューを見るが、中トロ丼に惹かれてしまったので浮気をして中トロ丼に。海鮮丼、ごめんなさい。次来た時は食べてあげよう。次があるか不明だが。

 客が私しかいなかったので(時間帯からしてヘンだというのもあるだろう)、注文後すぐに出てきた。食べて落ち着いても所要時間20分。まだ20分以上ある。次は土産物を漁る。勝浦ということでマグロがやはり多かったが、冷凍マグロにしたとしても草津に着くまでには時間がかかるのでここは干物系に留める。また紀州ということで梅干も所望。これらは後に草津ですぐに完食されてしまった。

 15時。電車到着。今度は自由席。車両も違うので柱を見つけることはできなかった。発車後、すぐに就寝。気づいたら天王寺。途中検札以外は目が覚めなかったということは、よほど疲れていたのだろう。自覚はなかったが。ただ、この後、草津で徹夜麻雀があったのは内緒である。

 というわけで初日終了。あまりドラマのなかった旅だったが、これは嵐の前の静けさであったことだけ明言しておこう。2日置いて夏休みは水曜日から。3日後に、再びドラマが幕を開ける。


経費
JR 特急スーパーくろしお1号 6900
バス JR紀伊勝浦駅⇔那智山往復チケット 1000
納経 1 青岸渡寺 300
納経帳 青岸渡寺で購入 1500
JR 特急くろしお30号 6190
合計 15890
JR特急の価格が往路と復路で違うのは、自由席と指定席の違い

訪問寺院
1 青岸渡寺 和歌山県那智勝浦町 2 3
4 5 6
7 8 9
10 11 12
13 14 15
16 17 18
19 20 21
22 23 24
25 26 27
28 29 30
31 32 33

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