第87回
鉄分補給の旅 Vol.4
〜2007 鉄道の日記念企画〜

 さんぎょーと別れた私は一人、JRの旅を続けるべくJR富山駅ホームに立つ。ここからはこの旅では珍しい部類に入る一人旅に。

 富山駅  10/8(祝) 13:20 総営業キロ 801.8km

 まずは富山駅の駅標から。

富山駅

 富山からは家に帰る方向である北陸本線の敦賀方面へ。目的地は駅にして4駅先の高岡駅。13:22発。

 4駅、17分の旅であるが一人で乗る電車は2日前の信越本線以来である。一人旅には慣れている私であるが、その慣れた一人に戻ったというのに何か落ち着かないのは逆に隣にうるさいのがいたのが慣れてしまったためだろうか。

 高岡までは工場地帯のような場所を抜けていく。田園風景より飽きないが、工場ばかりでは面白くもない。

 高岡駅  10/8(祝) 13:39 総営業キロ 819.6km

 19分で高岡到着。結構近い。

高岡駅

 高岡からは2つの盲腸線が出ているのでその両方を乗りに行くことに。どちらに盲腸線なので高岡に戻ることになり、従ってどちらから乗ってもいいのだが、先に来た城端線に乗ることに。終点の城端駅を目指す。

 城端線は高岡から山の方に走る路線で、合掌造りで有名な白川郷への玄関口である城端と高岡を結んでいる。が、実際は殆んど通学路線であり、この日も(祝日ではあるが)学生が多かった。あとは地元のおばちゃんとか。サラリーマン風の方は一人もおらず。

 城端線の乗り場である2番ホームに行くと、電車は既に到着しており次の出発を待っていた。が、この電車が「忍者ハットリくん」のラッピング電車であった。作者の藤子不二雄(の両方)がこのあたりの出身(実際は氷見市出身、小学校から高岡市)であるのが縁らしい。

正面から
こちらは側面
直筆!?サイン

 ただ、元が「キハ40」という古いタイプの電車のため、中はあまりキレイなものではない。行き先表示の「城端」も何だか曇っている(但し雨のせいも少しはあるはず)。

 途中、チューリップで有名な砺波市を通るが、季節的にチューリップという時期でもないし、雨であることから車窓からチューリップを見ることはなかった。その他は見どころなし。無人駅も盛りだくさん。

 城端駅  10/8(祝) 15:00 総営業キロ 849.5km

 15時ちょうどに城端駅到着。

城端駅
駅舎

 白川郷に行くわけではないので、乗ってきたハットリくんに乗って折り返す。城端駅の停車時間は12分なので、比較的すぐの発車。

 高岡駅  10/8(祝) 16:02 総営業キロ 879.4km

 再び高岡駅。次はもう1つの盲腸線である氷見線で氷見駅を目指すことに。氷見線は城端線とは違い北に向かって走っているので、山ではなく海に向かうことになる。

 時刻表では16:12高岡発なのだが、時間になっても電車が来ない。雨の影響か、ただツイてないだけかわからないが、5分ほど遅れて来た。もはや急ぐ旅ではないので5分ほどの待ち時間はどうってことないが。来た電車はラッピングが施されていないキハ40。従ってハットリくんはいなかった。藤子Aは氷見市が出身なのに。

 途中にある伏木駅から「如意の渡し」と呼ばれる渡し舟があり、最近船にも力を入れている!?わが裏金産業としては乗るべきなのだが、乗り場を事前に調べていなかったし雨も降っているということから断念。都市対抗に出てた伏木海陸運送の伏木はここの地名。また、雨晴駅からは富山湾が綺麗に見える、ハズなのだが何度も言うように雨だったのが痛かった。

 氷見駅  10/8(祝) 16:45 総営業キロ 897.6km

 氷見駅には予定時間を6分オーバーして到着。やはり、藤子Aの出身地を強調するようにハットリくんのフィギュアが勢ぞろい。ただ、一番右の鳥だけ何かわかりません。

氷見駅
駅舎
ハットリファミリー大集合

 遅れを取り戻すためにすぐに出発するとのことで、慌てて写真撮影して乗って来た電車に乗り込み三度高岡に戻る。

 高岡駅  10/8(祝) 17:16 総営業キロ 915.8km

 盲腸線2つをクリアし、またまた高岡駅。ここからは万葉線という第三セクターの電車もあるが、今回の切符では乗れないので断念。高山本線に乗るため富山に戻っても仕方ないし(高岡本線に乗ると岐阜まで行ける)、ということでもうちょっと北にあるもう1つの盲腸線、七尾線をクリアすることに。始点は津幡駅だが直通電車が出ている金沢駅に向かうことに。

 高岡から金沢へは北陸本線さすがにすぐに電車は来た。ただ、到着した電車には座れず。そろそろみんな家へ帰る時間だからだろうか。

 金沢駅  10/8(祝) 18:08 総営業キロ 956.4km

 金沢駅到着。外はもう暗い。

金沢駅

 七尾線乗り場は通常の乗り場から少し離れており、場所がわからなかった私はスタートダッシュに失敗したばかりにまたしても座ることができず。ただ、高岡からの電車を降りてスムーズに乗り場に行ったとしても果たして座れるかどうかわからないくらい電車は混んでいた。この電車の終着駅である七尾駅がひとまずの目的地。

 七尾線は先述通り始点が津幡駅である。これは北陸本線の途中の駅なので、金沢から乗らなくても普通に乗れるのだが、厄介なのが終点の和倉温泉駅。特急サンダーバードやはくたかなどは直通で和倉温泉行きがあるのだが、普通電車は七尾駅までしか行かないのである。和倉温泉は七尾の1駅先なのだが、ここに普通電車で行くには七尾駅から伸びている「のと鉄道」に乗り換えなくてはいけない。非常に面倒くさい構造なのである。

 時刻表を見るとこれから乗る金沢発七尾行は18:14に金沢を出て七尾到着が19:33。が19:37に七尾から2駅先まの田嶋浜まで行くのと鉄道の電車が出る。これに乗れば19:43に和倉温泉に到着し、30分弱の待ち時間で七尾に戻れる。七尾からは同じく七尾線で金沢までこの日のうちに戻ることができるのである。これに乗らない手は無い。

 問題は待ち合わせ時間である。たった4分。七尾駅の構造がわからないので間に合うのかわからない。七尾線の道中にちょっとしたアクシデントで電車が遅れるだけでさらにわからなくなる。会社が違うので一度改札を出ないといけないのかもしれない。とにかく行ってみないことには乗れるかどうかすらわからない状況である。金沢駅に着いてしまっている私には調べる手段は無く(頑張れば携帯で調べられるのかもしれないが)、もう行くしかない。

 津幡から七尾線に入るが、すぐに車内の電気が消える。田舎の方で急に電気が消えるというのは、大体がデッドセクションなのであるが、後で調べたらやっぱりここにもあった。鉄っちゃんの私はさして驚かない。

 途中の羽咋駅でおおかたの人が降りる。手近にあった席が空いたのでこれ幸いと座る。と、そこでドッと疲れが出て眠気に襲われる。まあこの電車で終点まで行くし、特に問題はないやろな、と思っていたのだが…

 七尾駅  10/8(祝) 19:33 総営業キロ 1022.3km

 七尾駅到着。予定時刻ピッタリである。あとは4分のタイムラグのうちにのと鉄道の電車を探せば…とコトはスムーズに運ばなかった。羽咋から寝た影響で、七尾に着いたことすらわからなかったのである。気づいたのは車掌に「終点ですよ」と起こされた時。慌てて荷物を持って電車の外に出ると、無情にものと鉄道の車両が向こうに走っていく姿をわずかに目で捉えることができただけだった。

七尾駅

 次の金沢行の電車は20:11。あと40分もある。退屈なので一端駅を出て、ファーストフードか丼モノでもあれば軽く夕食としようと決め、駅の散策と合わせて外に出る。しかし、

寂しい外観

 駅前に店が少ない。あるのは居酒屋だけ。その他の店は既にこの時間には閉店していた。昔出張で小松駅前に泊まったことがあったが、その時も8時を過ぎたら駅前は閑散としていた。石川はこんなものなのだろう。

 さあ困った。駅では時間を潰せない。かといって駅前には何もない。出歩いても何かある気配も無い。唯一あったコンビニで少しばかりの食糧を買い、すぐに駅に引き返す。

 のと鉄道の乗り場は駅構内にすぐに見つかった。起きてれば多分乗れてた、と思う。

のと鉄道乗り場

 乗ってきた電車がそのまま折り返し金沢行になるのだろう。ホームに電車は待っていた。席を確保し、コンビニで購入した食糧を食す。はっきり言って虚しい。乗り換え時間が短いことをわかっていながら眠りこけてた自分の不甲斐なさに腹が立つ。まあ一人旅なんてこんなものか。

 結局20:11の電車に乗るしかないので乗る。金沢到着は既に9時半を回っていた。

 金沢駅  10/8(祝) 21:36 総営業キロ 1088.2km

 金沢に戻ってきた。この日はここで泊まり。駅前に泊まったが、まだ小松や七尾よりは店はあった。七尾で寂しい夕食を済ませていたので再びコンビニでおにぎりなどを買って帰り宿で食べる。下戸の私は飲みには行かない。

 金沢駅  10/9(火) 6:45 総営業キロ 1088.2km

 翌9日。ついにこの旅は4日目をむかえた。3連休が明けて平日となっていたが有給を使いこの日も会社は休み。とはいえ、予定は大したことは考えていない。ただ、どうしても北陸に行ったのであれば制覇しておきたかった路線が1つあった。越美北線である。

 福井駅から終点の九頭竜湖駅まで伸びている越美北線は、「北線」というだけあってかつては南線も存在していた。今はJRではなく長良川鉄道となり、もはやこの越美北線とつながることは無いのであるが、「九頭竜線」の別名があるとおり、九頭竜川に沿うように(途中何度も橋がかかっており渡りながら)山の方に向かう風光明媚な路線である。ただ、2004年に福井に降った豪雨の影響でやたらめったら橋が流され、福井に近い側が不通となってしまった。赤字路線であることから存続が危ぶまれたのだが、この旅行に行くわずか4ヶ月前にギリギリ復旧し全線開通となったのである。そんな路線なので、今度いつなくなる危機にさらされるかわからないので、せっかくだから乗ってしまおう、という魂胆である。

 ただ、問題が1つ。途中にある越前大野駅を境に運行形態が変わり、越前大野=九頭竜湖間は1日5本しかない。しかも始発は5:26。金沢泊の私には絶対に間に合わない時間である。次の列車は9:08福井発九頭竜湖行の直通。これに乗らないとさらに3時間半くらい待たされる異常なダイヤである。

 というわけで、まずは越美北線に乗るために福井駅に向かう。6:55金沢発。

 金沢から福井まではおよそ1時間半。サンダーバードでも50分かかる距離である。しかもこの部分は乗ったことがあり、さらに夜も明けきっていないので来るのはやはり睡魔。この時間だし金沢始発だし席は確保できていたので途中の記憶はすっ飛ばして気づいたら福井駅。

 福井駅  10/9(火) 8:31 総営業キロ 1164.9km

 福井駅到着。ホームを切欠いて無理くり作った2番乗り場に越美北線の電車がいた。

福井駅
越美北線乗り場

 福井発は9:08。ちょっと時間があるので腹ごしらえ。朝から贅沢にかにめし弁当。ただ待ち時間が微妙にあったので、出発前に全部食べ切ってしまったのだが。

 定刻どおり、9:08に電車は出発。乗客は私を含めて2人。目指す目的地は越美北線の終着駅、九頭竜湖駅

 最初の駅が越前花堂駅。ここが越美北線の始点なのだが、電車は全て福井駅から出ている。越前花堂は北陸本線にも駅があるが、途中で線路が分かれているため、同じ駅でも離れた場所にあるのが特徴(しかも越美北線は電化されていないので架線も無い)。しばらくはのどかな田園地帯を電車は走るが、一乗谷駅あたりから川沿いを進む。蛇行を繰り返し、何度も川を渡る。これだけ橋が多いと一度の鉄砲水で何箇所も崩壊して不通になってしまったというのもうなずける。大変なところに鉄道を通したものだ。

 あまりに退屈な景色にいつしかウトウトと転寝。ところが、中間あたりにある越前大野駅で大量の乗客に目を覚ます。この駅は九頭竜湖駅まで行かない電車が終着駅とする、言わば越美北線最大の中間駅なのだが、それにしても数が多い。しかもみんな親子連れ。これは遠足か何かか?それにしても引率が多そうだが。大騒ぎする子供達を引きつれ、電車は再び山奥へ。

 九頭竜湖駅  10/9(火) 10:45 総営業キロ 1143.3km

 彼らはいつまで乗るのかな、と思っていたらとうとう終着駅の九頭竜湖まで来てしまった。

九頭竜湖駅
駅舎

 かなり立派な駅舎。山小屋のような造りなのだがまだ駅舎は新しそう。遠足と思われる一行はここでマイクロバスが待ち受けており、それに乗ってさらに奥へと旅立った。ちなみに駅の名前の由来となっている「九頭竜湖」はこの駅からかなり離れているらしく、一行はそこに向かったのではないかと思われるのだが、引率がやたら多かった理由は最後までわからなかった。ひょっとしてあれは父兄か?

 駅前にはなぜか恐竜が。ちなみに電気仕掛けが施してあり、たまに動く。

ミスマッチ

 駅の端っこの方にはホームより先に無駄に伸びる線路。これがちゃんと伸びていれば越美南線とつながっていたのだが。

夢の跡

 やることが無いのですぐに電車に乗る。復路は10:57発と滞在時間はわずか12分。駅前に何があったかすら覚えていない(というかちゃんと回っていない)。

 帰りは見せ場なし。往路の終盤にうるさかった反動からか、ものすごーく静かに感じた。おかげでよく眠れたこと。往路と反対に越前大野から起きていたことはよかったのだが、だからと言ってみどころがあったかと言われると疑問。

 福井駅  10/9(火) 12:22 総営業キロ 1198.4km

 …と間をすっ飛ばして再び福井駅。往復に3時間ちょっとかかったが、乗り潰しが難しい線だっただけに価値はあった。往路と復路で起きてる地点と寝てる地点が違った(起きてる区間を並べるとちょうど路線分になる)というのも効率!?がよかった。

 ここから後は家に帰るだけ。えちぜん鉄道も乗る気なし(この切符で乗れないので)。我が家の最寄駅である東淀川駅までは北陸本線で敦賀まで行き、そこから新快速で高槻まで、普通に乗り換えて東淀川まで、と乗車経験のある線ばかりをたどる。まあ往路が飛行機だっただけにこの行程では初の路線だが。

 東淀川駅  10/9(火) 16:39 総営業キロ 1384.8km

 家に到着したのが17時。越美北線以外は一切寄り道をしていないのにこの時間。そりゃ疲れもする。家に帰ってすぐに眠ってしまった。

 これにてこの旅は終了。雨にたたられた思い出ばかりが残る行程だったが、アルペンルートも行けたし(眺望が最悪だったが)、見たい駅もいくつも見られたし満足。これで3060円×日数というのはやはり安い。青春18きっぷには及ばないが、観光シーズンを避けられたのも大きかった。だが次は秋雨の通り道ではなく、もっと晴れている時期に予定を組みたいものだ。あとは雨職人の2人が一緒に行動しないことか。

 ご同行いただいたkageさん、tsuka-p1976さん、さんぎょーさん、ありがとうございました。


経費
JR 鉄道の日記念切符 3060
小計 3060
4日合計 24740
  
本来の経費
JR 乗車券286.4km分(3日目) 4940
JR 乗車券296.6km分(4日目) 4940
小計 9880
4日合計 35160
  
得した分
合計 6820
減価償却率 [本来の経費] / [経費] 322.9%
4日合計 10420
減価償却率 4日合計 142.1%

注意:JRは全て「営業キロ」で計算しているので、実際の運賃と違う場合があります。


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