第90回
JR九州周遊の旅 Vol.3

 さてこの旅も3日目。久しぶりのまともな寝床で体力も充分回復。この日は熊本県内をメインに。

 熊本駅  12/27(水) 8:28 総営業キロ 2142.6km JR九州乗りつぶし 1158.9km

 スタートの熊本駅。熊本駅からは、鹿児島本線、豊肥本線、三角線と3つの線(正確に言うと鹿児島本線は八代方面と博多方面があるので4方向)が出ているが、今回は八代方面に。目指すは鹿児島本線からさらに先、肥薩線に乗り人吉駅まで行くことに。乗車するのは特急くまがわ1号

 途中、昨日に真っ暗な中走った宇土駅、それに新幹線の停車駅である新八代駅を通過し、わずか1駅区間だけ残っていた八代駅まで走破。八代駅は肥薩おれんじ鉄道の乗り換え駅だが、電車はそのまま肥薩線に乗り入れ、乗り換えもしないので駅の構造はよくわからなかった。

 八代駅からは、球磨川沿いを走る。山間を川が流れ、その横を線路が伸びている、という感じ。実に長閑だ。対岸には国道と思しき道が走っているのだが、滅多に橋を見ないため、どうやって対岸に渡ればいいのか全く不明。

 人吉駅  12/27(水) 9:52 総営業キロ 2230.1km JR九州乗りつぶし 1213.5km

 八代から約1時間。電車は終点の人吉に到着。

人吉駅
駅舎

 人吉駅からも引き続き肥薩線。南に下る。が、ここはこの旅最大の見せ場。肥薩線の中でも秘境と言われている、山岳地帯を走るのである。高低差もさることながら、スイッチバックとループ線が1つになった、日本でここしかない線形の大畑駅、日本三大車窓となっている矢岳越え、SL記念館がある矢岳駅、それに幸せの鐘がある真幸駅を経て吉松駅へと抜けるルート。見どころが沢山ある、他に類を見ない路線なのだ。

 さらにこの人吉−吉松間、なんと1日5本しか電車が無い。1本逃すと平気で3時間、4時間と待たされること間違いなし。なかなかおいそれと行けないのだ。そうは言っても、人吉や吉松に行く電車は基本的にこの電車に合わせて発着をするので、今回も待ち時間はわずか10分程度。

 人吉−吉松間は、1日2本、いさぶろう、並びにしんぺいという名で特別列車が走っている(下りがいさぶろう、上りがしんぺい。同じ列車を使用し、上りと下りで名称が違うだけ)。観光用に特化した列車で、車掌を兼ねた女性が車窓と駅をガイドしてくれるのだ。また、この列車、2両編成なのだが殆んどが指定席。自由席はわずか7席しかなく、基本的には予め指定席を買っておかないと乗れないに等しいという、トータルでそれはそれはハードルが高い路線なのである。

 もちろん、この旅のために私は予め購入済。指定席券は500円(乗車券は周遊きっぷをそのまま使用可能)。

いさぶろう指定席券

 ちなみにいさぶろうの名は、人吉−吉松間の路線を建設した当時の逓信大臣、山縣伊三郎に由来している。

 人吉駅では既にいさぶろうがスタンバイ。乗り場には大きく「いさぶろう号のりば」の文字。

いさぶろう
「いさぶろう号のりば」の看板

 車内はこんな感じできれいに整備されている。まさに観光列車。

木目調でなかなか雅な造り
カウンターテーブルも備え付け

 10:03、いさぶろう1号は人吉駅を発車。ガイド兼車掌さん(素晴らしいことに女性!)は丁寧に肥薩線に関して解説をしてくれているが、私は球磨川を渡ってすぐのところに見えた、川上哲治記念球場が気になってしょうがなかった(あとで調べると、川上哲治は人吉出身らしい)。

 大畑駅  12/27(水) 10:15 総営業キロ 2240.5km JR九州乗りつぶし 1223.9km

 人吉を出て12分かけ、大畑駅に到着。スイッチバックもループも、この駅を出たところにあるので、まだこの段階では普通に停車。ちなみにこの駅、「おこば」と読む、難読駅名。クイズによく出ます。

大畑駅

 いさぶろう、しんぺいは各駅で、見物のために数分停車してくれる。その間、乗客は列車を降りて 駅舎などを見ることができる。当然、女性車掌のガイドもついてきてくれる。いろいろ話をしてくれるのだが、大体の観光客は人の話を聞かずに駅の周りをウロウロ。仕事とはいえ、可愛そうに。

 大畑駅は前述どおりスイッチバック駅なので、到着後にスイッチバックをするため、運転手が反対側の運転台へと向かう。また、現在は気動車での運転なのでこのように運転手が反対側に移動するだけでよいのだが、その昔、蒸気機関車で運転されていた頃はここが重要な給水ポイントとなっていたようだ。無理やり通したような線形をしているので、駅の周辺は人気が全くない。そんな歴史からか、周りの風景に比べて駅舎はものすごい立派。

駅舎遠景
レトロ感満載

 駅舎のそばには、これまた歴史上大事な役割を担っていたであろう給水塔。

給水塔

 さらに、駅舎と線路の間にはこのようなものが。

花畑?

 来る者を飽きさせない工夫か。歴史と現代の息遣いが混然としていて赴きがよい。

 列車はしばらくして大畑駅を出る。

 次の駅である矢岳駅に向かう。まずはもう1段のスイッチバック。再び反対側の運転台に運転手が戻り、今度はループを。ループを通り終わるくらいに眼下に先ほどまでいた大畑駅を見ることができる。

ループからの大畑駅

 うーん、もうちょいいいアングルがあったかもしれないのだが、私のカメラと私の腕ではこれが限界。とりあえず真ん中へんにそれらしきものが見えるでしょ。ちなみに、写真左側に写っているのはループ線を表している看板。この辺ではやはりサービスで非常にゆっくり走ってくれる。

 矢岳駅  12/27(水) 10:41 総営業キロ 2250.0km JR九州乗りつぶし 1233.4km

 大畑を出てから20分ほど経って、矢岳駅到着。営業キロが9.5kmながら、途中サービスの徐行を含めて非常にゆっくりとした足取りで進むいさぶろう。平均時速だと30kmくらいか。まあ停車時間が長いから単純にそんな計算にはならないが。ちなみに矢岳駅は肥薩線の駅の中で最も標高が高いところにある。

矢岳駅

 こちらの駅も駅舎は古くて立派。こういう駅舎が続くとなんだかうれしくなってしまう。

駅舎。古民家みたい。

 矢岳駅の最大の特徴は、併設されている「人吉市SL展示館」。なんと無料で入れます!!但しここまで来るのにすごーく時間とお金がかかりますが。中に入ると、D51が置いてあり、中を見ることも可能。動態保存か静態保存かはおそらくガイドが言っていたと思うが、例によって話を聞いてないので不明。ちなみに、以前はもう1台SLがここにいて並んで展示してあったが、そちらは「あそBOY」として1988年から2005年までの17年間に熊本と宮地の間(豊肥本線)を運転され、また2009年からは熊本と人吉の間を運転している。今も現役。

人吉市SL展示館
こちらは動かないD51

 あまり広くはない展示館だが、見ていてなかなか飽きない。しかしながら、いさぶろうの停車時間は8分ほどしかなく、一生懸命見るには時間が足りない。まあSL自体は静態保存であればここに限らず見ることは可能であるし、そもそもいざぶろうに乗り過ごすと吉松方面行きは3時間ほど来ない。周辺に民家1つ無いこの駅での3時間はきつい。後ろ髪を引かれつつ車内に戻る。

 矢岳駅を出てすぐトンネルに。このトンネル、明治時代にまだ鹿児島本線として通そうとした際に掘削されたものらしいが、非常に何工事だったこともあり、かなりの死者が出たそう。このトンネルの矢岳側の入口には山縣伊三郎(開通当時の逓信大臣)の額が、真幸駅側の入口には後藤新平(開通当時の鉄道院総裁)の額がそれぞれ掲げられており、これが「いさぶろう」「しんぺい」の名の由来となっている。

 このトンネルを抜けると、またいさぶろうは徐行。ついには駅間であるのに停止。しかしこれもサービスの一環で、ここが日本三大車窓の矢岳越えなのである。

「日本一の車窓」の看板
矢岳越えから霧島連山の風景

 晴れていれば遠く鹿児島の桜島が見えるらしいが、こんなどんよりした天気では全く見えず。

 真幸駅  12/27(水) 11:01 総営業キロ 2257.3km JR九州乗りつぶし 1240.7km

 真幸駅到着。同じくレトロな駅舎。真幸駅は、肥薩線唯一の宮崎県の駅。ここでちょっとだけ宮崎をかすめるのだが、この電車がなければここは陸の孤島だろう。

 ちなみにこの駅もスイッチバック駅。いかに険しい道のりなのかがよくわかる。この駅に矢岳側から入るには、一度南側で止まり、北にある駅に入線する形になる。

真幸駅
駅舎

 駅標だが、ホームにはJR九州仕様のものもあったが、Webには敢えて国鉄風のこちらをアップ。昔はどこもこんなんだったよなぁ。あと柱に国鉄仕様の縦長の駅名標があると完璧なんだが(調べたら「第3種駅名標」というらしい。今じゃ全然見かけない)

 こちらの駅のハイライトは、ホームに構えている「幸せの鐘」。鳴らすと幸せになるらしい。というわけで、鳴らしてみた。カメラマン(カメラレディー?)は女性車掌にお願いした。

幸せの鐘

 …お見苦しい写真で本当に申し訳ない。

 真幸駅は、肥薩線がまだ鹿児島本線だった頃に開業された歴史ある駅なのだが、終戦直後の1945年に駅付近のトンネルで列車が大規模な事故が起きたり、大雨により発生した土石流が駅を襲ったりと、不遇の駅となってしまっている。過疎も進み、近隣には人影(人家)は見当たらない地となってしまった。現在の姿はあくまで観光地としてしか見ることができないが、先のトンネル事故はいさぶろう車内でも案内があるように、歴史の1つとしてこの地に刻まれているようだ。

 こちらは土石流が来た当時から残されている岩。遠くから撮影したので文字が見えないのが痛恨だが、「山津波記念石」と書かれたプレートがある。時期も記載があり、「昭和47年7月6日」に発生したそう。

土石流で流れてきた岩

 真幸駅も停車は5分で出発。車内に戻る際、乗車駅証明書を取る(本当はいけないのでしょうけど。ごめんなさい)。

真幸駅の乗車駅証明書

 すでにスイッチバックは終わらせているので、吉松に向かうにはそのまま列車は発進する。

 吉松駅  12/27(水) 11:16 総営業キロ 2265.1km JR九州乗りつぶし 1248.5km

 吉松駅到着。

吉松駅
駅舎

 今までタイムスリップしてきたかのように昔の駅舎やホームを見てきたので、ちょっと趣向が違う駅舎を見るだけで全然違うように見えてしまうのが不思議だ。

 しかし、ここでゆっくり腰を据えて駅舎を眺める時間も、昼飯を食べる時間もない。吉松駅から出ている吉都線に乗り換えるわけでもない。ここからは、なんと今きた肥薩線を戻るという暴挙に出るのである。

 「乗りつぶし」を行うにあたっては、目の前に新しい線(未乗線)があるにも関わらずそれを見過ごして今来た路線を再び戻るのは一見不可解に見えるかもしれない。しかし、ここで南側(鹿児島側)に行ってしまうと、次に北側(熊本側)に戻るには、またしても九州新幹線を使うしかなくなってしまう(日豊本線経由もあるが、こちらも乗りつぶし済である上に時間が半端なくかかってしまう)。限られた時間内で効率よく乗りつぶす案を練った結果、この結論に落ち着いたのだ。結果、吉松から隼人の37.4kmは後ほど乗りつぶすことに。

 人吉に戻るには、肥薩線を北上するしかない。しかし、先述どおり今乗ったいさぶろうは今度はしんぺいとなって戻ることになる。ということは…そう、再び指定席が必要になってしまうのだ。500円也。安いとはいえ往復1000円。なんだかちょっとバカバカしい。

しんぺい指定席券

 しんぺいの名の由来は、この区間が建設された当時の鉄道院総裁だった後藤新平から。いさぶろうと由来はよく似てる。

 出発までに20分ほどあるので、あたりを見回すと隣のホームにはやとの風がいた。真っ黒なボディーがカッコいい。

黒光り
横から

 中も撮影したかったが、出発まで時間がなくあわただしく撮影したので撮れず。無念。

 11:40にしんぺい2号に乗車。指定席に座ると検札。車掌は先ほどと同じ女性の方だった。さすがに面が割れているからか、「またのご乗車ありがとうございます」と言われてしまった。ただ、お話しを聞く限りでは、往復する人は結構いるそうだ。

 道中のみどころは往路で確認したので書くこともなし。知ってる道を戻るだけ。列車から降りないという選択肢もあったが、乗客全員が降車したのでいたたまれなくなり、結局私も降りた。矢岳越えではまた列車は(サービスのため)停止したが、車窓を見ることもなかった(見たい人に譲った)。

 人吉駅  12/27(水) 12:53 総営業キロ 2300.1km JR九州乗りつぶし 1248.5km

 いさぶろうに乗り人吉を出たのが10:03、しんぺいに乗り人吉に戻ってきたのが12:53。たった4駅の往復に、実に2時間50分を使ったことになる。ただ、そうは言っても時間に対してそれ以上に得難いものもあった。三大車窓なんてこんな機会でしか観ることもないだろうし、ループ線とスイットバックの駅を(同じ駅だけど)1日2回見る機会もそうそうないだろう。

 人吉駅に戻り、ようやく昼食。ここの駅弁の1つ「栗めし」が有名なので購入。人吉駅は今どき珍しい駅弁の売り子が列車近くまで売りに来てくれる形式を採っているが、残念ながらその中には栗めしは無く、近くの駅弁屋に買いにいくことになってしまった(ちなみに写真がありません…撮った記憶あるのに)。

 さて、次なる目的地だが、人吉から出ているくま川鉄道(旧国鉄湯前線)も視野に入れたが、これに乗ると次の接続が悪い。また、戻る方向に熊本まで快速九千坊号という特徴的な快速も出ているのだが、生憎この日は運行していない。そこで、特急九州横断特急6号に乗って別府方面に行くことに。出発も15分後と都合がよく、豊肥本線の乗りつぶせるのも都合がよい。九州横断特急は編成によっては熊本発なのだが、この時間に出ているのは人吉発(つまり当駅始発)なのである。指定席が無い私にはもってこいの列車だ。しかしこの特急、えらいストレートな名前だな。

 九州横断特急6号は別府行だが、実際に乗るのは途中の立野駅まで。八代まで肥薩線、熊本まで鹿児島本線で熊本から豊肥本線に入る。

 八代までは山あい、熊本までちょっと都会を通り、いよいよ豊肥本線。熊本寄りの部分では学生も多い、中途半端な時間であるにも関わらず学生が多いのは、部活動があるからか(この時期は冬休み)。武蔵塚、光の森あたりは住宅街となり、特に光の森駅前には大きなショッピングモールがあり、なかなか開けている感じがする(とはいえ、この辺の人たちは車を使うのだろうけど)。

 立野駅に近づくと、今度はまた山あい。しばらくして立野駅に入線。

 立野駅  12/27(水) 15:22 総営業キロ 2419.9km JR九州乗りつぶし 1280.8km

 立野駅はスイッチバック駅。熊本側だと立野駅に入り、方向を変えて西に、さらにまた戻して東に行く形になる(従って、立野で降りる場合はまだスイッチバックを経験していない)。Z型(3段スイッチバック)のため進行方向が2度変わり、逆向きに走り出す区間はごくわずか。背もたれを反対にしなくてもいいレベル。

立野駅(JR)
こちらは南阿蘇鉄道の駅標

 立野駅で降りたのは、ここから出ている南阿蘇鉄道(旧国鉄高森線)に乗るため。こちらはJRになる前に第三セクターに転換された路線という珍しい路線であり、且つ日本一長い駅名である、南阿蘇水の生まれる里白水高原駅があることで有名。今回乗ったのも、せっかくなのでこの駅を見に行くという目的も兼ねて。JRの乗りつぶしとは関係ないが、今回は終点の高森駅まで往復することに。

 立野駅ではきっぷ売り場があったが、今回は形に残ることもあり、「1日フリー乗車券」を購入することに。これは車内での購入ということで、早速車内に。既に南阿蘇鉄道の列車は立野駅には入線していた。宝くじの助成金で作られた車両なのか、前面に「宝くじ号」と書かれている。

MT3010形車両「宝くじ号」

 車内に運転手がいたので、フリー乗車券を欲しいと告げると、「今から使うんですか?」と訝しげな答え。それもそのはず、この時点で既に15時半であることと、この切符で往復しただけでは元が取れない(片道470円、往復でも940円)ことから、感覚的に損ではないかということで親切心ながら答えてくれたから。それでも「形に残るきっぷがほしい」と言うと、「そう言ってくれると嬉しいですね」と、快く売ってくれた。

南阿蘇鉄道1日フリー乗車券

 日付が手書きなところが実にローカル線らしくてよい。

 列車は他に2〜3人を乗せ、立野駅を15:40に出発。するとすぐ、いきなりの見せ場。近くを流れる白川を渡る際の第一白川橋梁(通称立野橋梁)上で、列車を停めて眺めを楽しませるサービス。だが、渓谷が深すぎてよくわからない。地上から橋梁までは高さ64.5mもあり、余部鉄橋と比べても20m以上高い。そのため、列車から身を乗り出して真下を見るのはものすごく怖い。結構な時間停まってくれるサービスだったが、正直ちょっとでよかった。高所恐怖症ではない私がこんな調子なのだから、高所恐怖症の方がこれに乗ったら失神するだろうな。

 立野から3駅目に阿蘇下田城ふれあい温泉駅という駅がある。駅舎全体が城のような形になっており、駅名のとおり温泉浴場を併設している。ところが、この日はなんと休業(開いてても行かないけど)。ある意味ツイてる。ちなみにこの駅、読み仮名で16文字あり、日本で5番目に長いそうだ。

 阿蘇下田城ふれあい温泉の次は本来の目的地である南阿蘇水の生まれる里白水高原駅。周りに何もなさそうな場所で大きな道路もない田園風景が広がる場所だったが、何人か降りる人がいた。便乗して駅標を撮影しようとしたが、角度が悪かったのかうまくいかず。帰りにリベンジすることに。

 高森駅  12/27(水) 16:11 総営業キロ 2437.6km JR九州乗りつぶし 1280.8km

 高森駅は阿蘇の山中にある。道中は比較的平たい感じの車窓だったが、高森駅前はやや山あいといった感じ。

高森駅
駅舎

 本来は、ここから高千穂のほうまで線路をつなげる予定だったそうだが、トンネルを掘った際に出た湧水を止めることができず、計画は頓挫し未成線のままつながることはなくなってしまった。

 このトンネルは高森駅の近くにあるそうだが、残念ながら今回は訪れることはなかった。理由は単純で、折り返しの列車がすぐに発車してしまうため。1本逃すと90分ほどないので、後の予定が狂ってしまうのだ。

 列車に乗り込むと、運転手は往路と一緒のジェントルマン。「楽しめましたか?」と声をかけていただいたが、わずか9分の停車では何もできません。ごめんなさい。

 高森を出た宝くじ号は、来た道を忠実に戻る。

 南阿蘇水の生まれる里白水高原駅  12/27(水) 16:33 総営業キロ 2446.2km JR九州乗りつぶし 1280.8km

 高森を出て十数分、列車は再び南阿蘇水の生まれる里白水高原駅へ。今度こそ、と誓いドアに近いところを陣取り(乗客は私のほかに3〜4人なので陣取るのは容易だった)、駅に着いてさあ撮影、と思ったが、困ったことにドアから駅標の角度が往路より悪い。必死になって体を捻りながらなんとか正面から撮れないか、と試行錯誤していると例の紳士が状況を察してくれたのだろう。「撮れた?撮れてないなら待っててあげるから」と優しい一言。他の乗客に申し訳ない気持ちと、とても優しいこの運転手に感謝の気持ちをこめ、精一杯の謝罪と御礼を言って駅標と駅舎を撮影。ホームが狭く、どうしても駅標は正面から撮れなかったが、なんとか撮影はできた。

南阿蘇水の生まれる里白水高原駅
駅舎

 温かい運転手の運転で、とてもいい気分で立野駅へ。

 立野駅  12/27(水) 16:47 総営業キロ 2455.3km JR九州乗りつぶし 1280.8km

 再び立野駅。運転手にこの旅の真の目的を告げ、「頑張ってね」と声をかけられる(最後まで紳士な運転手でした。この場を借りて御礼申し上げます。ありがとうございました!)。

 次は後続の九州横断特急で大分駅まで。これが今日の目的地。しかし、次の特急が立野に来るのが18:23と約1時間半も後。この駅には時間を潰すものが何一つ無く、ここでの90分はツラい。そこで考えたのが、一度時間が潰せるところまで戻るということ。

 先述どおり周遊きっぷは指定席が取れないので、同じ列車に乗るのであれば早いうちに乗るほうが席の確保がしやすい。早く列車を捕まえるには先の駅に行くのがよい、結果、戻るという選択肢が得策と考えたわけだ。

 で、どこまで戻るのかを検討したところ、途中で通った豊肥本線の光の森駅にすることに。駅前にショッピングモールがあり、時間が潰せて待ち時間も適当(45分)。熊本まで行くと間に合わないという絶妙な場所である。

 立野からは戻る方向で肥後大津行に乗車。乗り換えて熊本行に乗車して光の森を目指す。

 光の森駅  12/27(水) 17:12 総営業キロ 2472.8km JR九州乗りつぶし 1280.8km

 光の森駅。出来立ての駅なのか、ホームも駅標も駅舎もすごくきれい。

光の森駅
駅舎

 駅前は開発途上でショッピングモール以外は広大な空き地が広がっていた。ちょっと冷かして駅に戻る。

 光の森駅  12/27(水) 17:59 総営業キロ 2472.8km JR九州乗りつぶし 1280.8km

 しばらくして九州横断特急8号がやってきた。意外にも自由席は空いており、席は楽に確保できた。

 ここから大分へ向かう。途中、立野のスイッチバックを経て、ここからは乗りつぶしゾーン。立野からは1時間40分の長い旅。夜も更け、大分県境あたりでは完全に夢の中。

 大分駅  12/27(水) 20:28 総営業キロ 2606.0km JR九州乗りつぶし 1396.5km

 大分到着。この旅2度目だが、前回より早い時間。それでも20時半だが。豊肥本線は2本の九州横断特急で見事クリア。

駅舎

 駅標はすでに出ているのでここでは駅舎だけ。

 3日目は大分泊。確保していた宿は駅前にあるが、腹ごしらえと思って駅前を探すも店が無い(あるにはあるが、閉まっている店も多い)。居酒屋は下戸の私が一人で行くにはハードルが高い。選択肢としては、駅構内にあるうどんしか無かった(立ち食いではない)。申し訳程度にとり天があったのでそれも食す。いちおう大分名物。

 宿に入り、冷えた体を暖めようと暖房に手を伸ばす。ところが、

どこの国の仕様なのか

 なんと温度の表示がデフォルトで華氏になってる。華氏73度言われても全然ピンとこない。普通の人はわからんでしょ、これ。「73度!?おそろしく高温やん!」という感じで。ちなみに華氏73度は摂氏23度。設定としてはまあ普通か。一応摂氏と華氏の切り替えはあるので(写真でもうっすらとおわかりいただけるかと)大丈夫なのだが。考えようによっては、華氏で1度ずつの設定ができれば、非常に細かい温度設定ができる、ということだから、細やかなサービス、とも言えよう。1度ずつ設定できたか覚えてないけど(←結構大事なとこなのにあかんがな)。

 3日目を終了して乗車距離は2,600kmを突破。乗りつぶしも2/3近く(65.8%)となった。ここまで列車の遅延もなく、大きなトラブルに見舞われていないのはいいことだ。

 4日目は筑豊炭田エリアを細かく回るコース。乗り換え多数、見どころ少数。乞うご期待。


路線乗りつぶし経過

実際の路線 乗りつぶした範囲
路線名 営業キロ 営業キロ 達成率
JR
九州新幹線 新八代−鹿児島中央 137.6 新八代−川内 91.5 66.5%
山陽本線 下関−門司 6.3 下関−門司 6.3 100%
鹿児島本線 門司港−八代 232.3 小倉−鳥栖 95.8 56.6%
熊本−八代 35.7
川内−鹿児島 49.3 川内−鹿児島 49.3 100%
香椎線 西戸崎−宇美 25.4 0%
篠栗線 桂川−吉塚 25.1 0%
三角線 宇土−三角 25.6 宇土−三角 25.6 100%
肥薩線 八代−隼人 124.2 八代−吉松 86.8 69.9%
指宿枕崎線 鹿児島中央−枕崎 87.8 鹿児島中央−枕崎 87.8 100%
長崎本線 鳥栖−長崎 125.3 鳥栖−長崎 125.3 100%
喜々津−浦上 23.5 喜々津−浦上 23.5 100%
唐津線 久保田−西唐津 42.5 久保田−山本 36.2 85.2%
筑肥線 姪浜−唐津 42.6 0%
山本−伊万里 25.7 山本−伊万里 25.7 100%
佐世保線 肥前山口−佐世保 48.8 肥前山口−佐世保 48.8 100%
大村線 早岐−諫早 47.6 早岐−諫早 47.6 100%
久大本線 久留米−大分 141.5 0%
豊肥本線 大分−熊本 148.0 大分−熊本 148.0 100%
日豊本線 小倉−鹿児島 462.6 小倉−鹿児島 462.6 100%
日田彦山線 城野−夜明 68.7 0%
日南線 南宮崎−志布志 88.9 0%
宮崎空港線 田吉−宮崎空港 1.4 0%
吉都線 吉松−都城 61.6 0%
筑豊本線 若松−原田 66.1 0%
後藤寺線 田川後藤寺−新飯塚 13.3 0%
合計 2121.7 合計 1396.5 65.8%
私鉄
松浦鉄道 伊万里−佐世保 80.8 伊万里−佐世保 80.8 0%
南阿蘇鉄道 立野−高森 17.7 立野−高森 17.7 0%
合計 98.5

全て「営業キロ」で計算しています。
小倉−西小倉間は鹿児島本線と日豊本線で重複しています。



経費
JR 周遊きっぷ(ゆき) 7600
周遊きっぷ(ゾーン) 14500
あかつき(特急+寝台) 9450
松浦鉄道 乗車券 2020
南阿蘇鉄道 1日フリー乗車券 1000
九州新幹線 乗車券+特急券 3450
小計 38020


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